先日、テレビ番組の一コーナーで、生ハムの製造販売をしている企業の紹介を見た。
美味しそうだったので、妻と、ナビを頼りに向かったが、夕方、細く、うら寂しい田舎道を行くうちに、昔、その道を走ったことがあるような感覚になった。。
ようやく店舗にたどり着くと、300坪はありそうな広大な敷地にコンテナ風の店舗と肉の加工場らしき建物があった。
やはり以前訪れたような記憶があったが、その当時の記憶では、その一帯には竹林が生茂り、竹林に飲み込まれそうな小さな廃屋が一棟ポツンとある状況だった。
気になったので、先日、私が過去に相続財産管理人をしたときの事件記録を書庫から引っ張り出してみた。
まさしくその土地は、私がかつて相続財産管理人として、売却した廃屋と竹林だった。
相続財産管理人とは、死亡した人に相続人が誰もいない場合に、裁判所から選任されて、死亡した人の全財産「遺産」をお金に換えて、国に納めることを仕事とする人で、私は、その廃屋で孤独死した身寄りのない男性の相続財産管理人に選ばれたのだった。
その男性には、遺産として、一人で住居していた廃屋とその敷地の竹林の土地、数百万円の預金、納骨堂の骨壺があった。
私は、預金を払い出し、その一部を使って業者に委託して廃屋を解体し、竹林を伐採し、更地にして、売却し、お金に換えた。
一番手間取ったのは、骨壺の処理だった。
遺骨の永代供養を引き受けてくれるお寺を探し、市役所に行って遺骨を移動させることの許可をもらい、納骨堂の管理組合の責任者に立ち会ってもらい、骨壺5つほどを取り出し、私の車に乗せて、搬出し、数日後の予約日に、引き受け先のお寺みに運び込み、住職と二人で、お祓いを済ませ、お骨だけを取り出して合葬墓に納め、お寺で引き取りを断られた空の骨壺は、数日間、私の車の後部座席に積んだ後、クリーンセンターに持ち込み、処分した。
その翌朝、私の左目が腫れ上がった。
今回の生ハム工場の件は、相続財産管理人の仕事を振り返る機会を与えてくれた。